葬儀と、その後の手続きが一段落した。実家をどうするかという話が、親戚から、あるいは自分の中から出てきた。でも、何から手を付ければいいのか分からない。そんな時期の方に向けて書いています。
最初の3か月で決めることは、実は1つだけです。相続するのか、放棄するのか。 そして放棄を選ぶのは、借金や保証が財産より多いときだけです。つまりこの3か月は「借金があるかどうかを調べる期間」だと考えると、やることがはっきりします。
どうして 3か月なのか
相続放棄は、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる決まりです。何もしないまま3か月がたつと、相続を認めたことになり、家も預金も、借金や保証も、全部引き継ぎます。
放棄すると、借金だけでなく、家も預金も受け取れません。だから、借金がなければ放棄する理由はまずありません。多くの人は、結果として「何もしない」で相続します。それでいいのです。ただ、調べたうえで何もしないのと、知らないうちに3か月が過ぎるのとでは、意味が違います。
調べきれないうちに期限が近づいたら、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てると、期限を延ばせます。期限が過ぎてから相談するより、期限の前に延ばす方がずっと簡単です。
最初の 2週間:書類を 探す
親御さんの家には、大事な書類がたいてい一か所にまとまっています。仏壇の引き出し、たんすの上の箱、金庫。見つけたら、その場で写真を撮っておくと、後で何度も探さずに済みます。
- 固定資産税の納税通知書:毎年5月か6月に市区町村(東京23区は都税事務所)から届く封筒です。家と土地の評価額が書いてあり、建った年が書いてあることも多くあります。相続税がかかりそうか、売るときの控除が使えそうかは、この通知書でだいたい見当が付きます
- 権利証(登記識別情報):家の名義が誰かが分かります。祖父母の名義のままだった、ということも珍しくありません
- 通帳、証券会社や保険会社からの郵便物:財産の全体が分かります
- 借入の契約書、督促状、クレジットカードの明細、保証人になった契約書:借金と保証の有無が分かります
- 遺言書:自筆の遺言書は、家庭裁判所で「検認」という手続きが要ります。封がしてあれば、開けずに持っていきます(家庭裁判所の外で開けると過料の対象になります)。公正証書の遺言書と、法務局に預けてある遺言書は、検認が要りません
借金は、 家の 中だけでは 分かりません
督促状が見当たらなくても、借金がないとは言い切れません。銀行やカード会社からの借入は、信用情報機関という所に記録されていて、相続人なら開示を請求できます。
機関は3つあります。銀行の借入は全国銀行個人信用情報センター(KSC)、クレジットカードは CIC、消費者金融は JICC。それぞれ別なので、3か所に郵送で請求します。相続人であることを示す戸籍を添えて、手数料は1か所1,000円から2,500円ほどです。
ここに載らないのは、個人間の借金と、保証人になった契約です。これは郵便物と契約書で確かめるしかありません。
家の 中の 物は、 まだ 捨てない
意外に知られていないのがこれです。相続財産を処分すると、相続を認めたものとみなされ、放棄ができなくなります。家財を捨てる、売る、家を売る契約をする、といったことが処分に当たります。
とはいえ、家をそのまま傷ませるわけにもいきません。換気をする、雨漏りを応急で直す、冷蔵庫の中の物を捨てる。こうした「家を守るための手入れ」は処分に当たりません。片付けを本格的に始めるのは、借金がないと分かってからにします。
相続人が 誰かを、 戸籍で 確かめる
親御さんの、生まれてから最後までの戸籍を集めると、相続人が確定します。相続登記でも相続税の申告でも要る書類なので、早めに取っておいて損はありません。
法務局の「法定相続情報証明制度」を使うと、集めた戸籍を一覧図にした証明書を無料で出してもらえます。以後の手続きで戸籍の束を持ち歩かなくて済むので、相続人が2人以上いるなら使う価値があります。
3か月の 終わりに
借金や保証がない、あるいは財産の方が明らかに多い。それなら、そのまま相続します。手続きは何も要りません。
借金の方が多い、保証が心配、売れない土地しかない。それなら、家庭裁判所に相続放棄を申し立てます。費用は収入印紙800円と郵便切手です。財産の範囲でだけ借金を引き継ぐ「限定承認」という道もありますが、相続人全員がそろって申し立てる必要があります。
3か月の 後に 来る期限
相続すると決めたら、次の期限が順番にやってきます。
- 4か月:準確定申告。その年の所得に確定申告が必要だった場合です(事業や不動産の収入があった、年金が年400万円を超えていた、など)。医療費などで税金が戻ることもあります
- 10か月:相続税の申告。財産の合計が「3,000万円+600万円×相続人の数」を超える場合だけです。土地は路線価で評価するので、固定資産税の評価額より高めに出ます
- 3年:相続登記。家の名義を、引き継いだ人に変える義務です。放置すると10万円以下の過料の対象になります
- 相続から3年たつ年の年末(2027年12月31日まで):売るなら、空き家の3,000万円特別控除が使える期限です
あなたの相続の日付で並べたものは やること表をつくる で出ます。売るときの税金については 相続した実家を売るときの期限と税金 に書きました。
次の 一歩
親御さんの家で、固定資産税の納税通知書を探して、写真を撮っておくことです。これが見つかると、家の評価額と建った年が分かり、この先の期限のどれが自分に関係するかが決まります。探すのは10分ほど。見つからなければ、市区町村の固定資産税の窓口(東京23区は都税事務所)で「固定資産評価証明書」を取ると同じことが分かります(相続人なら取れます)。
出典
- e-Gov 法令検索 民法(第915条 熟慮期間、第921条 法定単純承認、第923条 共同相続人の限定承認)(2026年9月30日 確認)
- 裁判所 相続の放棄の申述(2026年9月30日 確認)
- 裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長(2026年9月30日 確認)
- 法務局 法定相続情報証明制度について(2026年9月30日 確認)
- 法務省 相続登記の申請義務化について(2026年9月30日 確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205相続税の申告と納税(2026年9月30日 確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2022(準確定申告)(2026年9月30日 確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3306被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(2026年9月30日 確認)
- 全国銀行個人信用情報センター 本人開示の手続き(2026年9月30日 確認)
- CIC よくあるご質問(法定相続人による開示)(2026年9月30日 確認)
- JICC 法定相続人等による開示(2026年9月30日 確認)
最終更新:2026年9月30日