誰も住まなくなった実家がある。売るのか、貸すのか、しばらくそのままにしておくのか。この記事では、売る・貸す・残すのそれぞれにかかるお金、時間、手間を比べます。
3つの選択肢のうち、期限があるのは「売る」だけです。空き家の3,000万円特別控除は 相続から3年たつ年の年末までに売った場合 しか使えません。ただし、2027年12月31日までの売却に限られます。だから順番としては、まず「売るかどうか」を考え、売らないと決めてから「貸す」と「残す」を比べます。この順番なら、選べる選択肢を残したまま考えられます。
同じ物差しで 比べる
3つの道を、次の3つの物差しで比べます。
- お金:入ってくる額と、出ていく額
- 時間:決めてから終わるまでの月数と、その道が続く年数
- 手間:自分が動く回数。とくに、平日の昼間にしか動けない用事(役所、法務局、現地の立会い)が何回あるか
どの道を選んでも、相続登記で名義を変えるところまでは同じです。違いが出るのは、その先です。
売る
手元に残るのは、売値から仲介手数料(売値の3%+6万円が上限で、これに消費税)と登記の費用を引いた額です。もうけには税金がかかりますが、3,000万円特別控除が使えれば0になることがほとんどです。
期間は、査定から引渡しまで3か月から6か月が目安です。自分が動くのは、査定の依頼、媒介契約、内覧の立会い、売買契約、決済の5回ほどで、平日に休むのは2回か3回です。
古くて傷みが強い家は、壊してから土地として売る道もあります。ただし壊すと、翌年から土地の固定資産税の軽減がなくなります。売れる見込みが立ってから壊す方が安全です。
税金と期限の詳しいことは 相続した実家を売るときの期限と税金 に書きました。
貸す
手元に残るのは、家賃から、貸す前の修繕費、管理会社の手数料、固定資産税、火災保険を引いた額です。家賃収入には毎年の確定申告が要ります。
貸す前に知っておくことが2つあります。
1つ目。いったん貸すと、空き家の3,000万円特別控除は使えなくなります。「相続してから売るまで、誰にも貸していない」が条件だからです。何年か貸してから売るつもりなら、控除で減る税金と、その間の家賃を、先に比べておく必要があります。
2つ目。ふつうの賃貸借契約は、貸す側の都合では終わらせにくい仕組みです。「5年貸して、その後は自分たちで使いたい」という希望があるなら、期間を決めて終わる「定期借家契約」という形があります。契約の前に書面で説明する手続きが要るので、管理会社に最初に伝えておきます。
向いているのは、駅に近くて、雨漏りがなく、少し手を入れれば人が住める家です。
残す
いちばん楽に見えて、実はいちばん長く続く道です。出ていくのは、固定資産税と火災保険、それに管理サービスを頼めばその料金。入ってくるものはありません。手間は、月に1回の換気と草刈り、郵便と光熱の整理くらいで、平日に休む必要はほぼありません。
ここで知っておきたいのが、固定資産税の軽減の仕組みです。住宅が建っている土地は、200㎡までの部分の税金が6分の1になっています。ところが、屋根や外壁が傷んだまま放置して、市区町村から「管理不全空家」として勧告を受けると、この軽減が外れます。税金が何倍にもなる可能性がある、ということです。
「決められないから残す」のも、1つの選択です。それなら、いつまでに決めるか、その日付だけはカレンダーに書いておくと、この道が何年も長引くのを防げます。
売れない、 貸せないとき
売れる見込みも貸せる見込みもない土地には、国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」があります。建物がある土地は申請できないので、先に自分で壊します。審査手数料は1筆14,000円。承認されると、10年分の管理費にあたる負担金を納めます。負担金は土地の種類と場所で変わり、法務省のページに計算シートがあります。
決め方
- まず、売るかどうか。3,000万円特別控除が使える家なら、相続から3年たつ年の年末(2027年12月31日まで)までに売れそうかを見る
- 売らないなら、貸すか残すか。家の状態(駅からの距離、雨漏り、築年)と、家族が将来使う可能性で分ける
- どちらにしても、換気と雨漏りの手当てだけは始める。税金の軽減を守ることにつながる
あなたの家の日付と市区町村の制度で7つの選択肢を並べたものは、やること表をつくる で出ます。
次の 一歩
不動産会社2社に、同じ条件で査定を頼むことです。売る気がまだなくてもかまいません。売値の見当が付くと、家賃と比べられるようになり、「残す」に毎年いくらかかっているかも見えてきます。こうして数字がそろうと、3つの道をお金の物差しで比べられます。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3306被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(2026年9月30日 確認)
- 国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置(2026年9月30日 確認)
- 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について(2026年9月30日 確認)
- 総務省 固定資産税の概要(2026年9月30日 確認)
- e-Gov 法令検索 借地借家法(第38条 定期建物賃貸借)(2026年9月30日 確認)
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要(2026年9月30日 確認)
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金(2026年9月30日 確認)
- 国土交通省 告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(2024年7月1日改正)(2026年9月30日 確認)
最終更新:2026年9月30日